印象に残った遺品整理

ある有名な作家のご遺族のお宅に先日お邪魔しました。奥様は70歳を少し過ぎた位で、お嬢さんは嫁いで遠方におられるとのこと。
亡くなった作家ご本人が大切にしていた本や資料、収集していた絵画や彫刻、生前に友達付き合いをしていた他の作家の色紙なども奥様がきちんと整理されており、とても几帳面はお人柄が伝わってくるようでした。
地元の博物館などに寄贈なされば、とご提案しましたが、博物館側は量的には三分の一は必要だけれども、三分の二程度は不要とのことで、全て一括してまとめて寄贈したい奥様としては今ひとつ気持ちが進まないようでした。
それから暫くお会いしていなかったのですが、また一年後位に連絡があり、やはり遺品整理したいのでどうしたら良いかと言うお話でした。
奥様はご自身の健康のこともあり、気持ちに整理がついたようです。
取り急ぎ駆けつけてお話を聞き、普段から付き合いのある古書店の方々に連絡をしてみました。
そして古書店の方から、遺品整理の業者の方を紹介していただき連絡をしました。
思いの外すぐに来ていただけることになり、奥様からのたっての願いで私も同席しました。
第三者の方にてきぱきと作業を進めていただく間、私は複雑な心境でしたが、奥様は思い出話を色々としてくださり表情も生き生きとしてきました。
そして数時間後に、業者の方のトラックが出ていった後、奥様はとても晴れ晴れとなさったようなお顔でした。
こんなに気持ちが軽くなるのだったら、もっと早く整理してもらうんだったとおっしゃっていたのが印象的です。
奥様の心の中に、ずっとご主人の遺品を何とかしなくてはいけないという義務感があったのでしょう。
それからまた数ヶ月後に連絡があり、奥様は健康も回復されて、ご自宅をマンションに立て替えてマンション経営なさるとのことでした。
気持ちの変わりように驚きました。
このことから、遺品整理に悩んでいる方へのアドバイスですが、夫や妻が亡くなった方には周囲が勝手に思い出にひたって老後を過ごしたいのだろうと考えがちですが、
案外ばっさりと整理してしまったほうが前に進む勇気が持てるものかもしれません。
それと、無くなってすぐではなく、博物館と相談したり等々、すこし時間が経っていたのも十分考える時間ができたのかもしれません。
過去を整理することによって、新しい自分に気付くことができるのかもしれませんね。


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